ほうき星を追いかけて

星のこととか、日々感じたこととか、いろいろ。

『ダーク・タワー』と時を超える〈カ〉


童子ローランド、暗黒の塔に至る


こんばんは、わかばです。

休日ですから、本の話題でも。……というのは口実で、本当は愚痴を書きにきたんです。ええ。
昨日、ぼーっとテレビを観ながら気付きましたよ。先週の金曜ロードショー、『ショーシャンクの空に』。見逃してるじゃないか!!このどアホウ!

だから、録画しておけって言ったのに!先々週の『ローマの休日』の件を忘れたか。オードリー・ヘップバーンの圧倒的な美貌を前に、貴様は無様な寝顔を晒していたではないか。「あ、あかん」と目を覚ました時にはもう手遅れで。こんなことは二度とごめんだと思っていたはずなのに。

ショーシャンクの空に』、観たかったよう。

なぜこんなに嘆いているのかというとですね、原作のファンなんですよ。原作、つまり小説の方の『刑務所のリタ・ヘイワース』ですが。スティーヴン・キングが書いたにしては珍しく希望のあるお話で(とはいっても、やはり切なさは漂っていましたが)、これは映像化にも期待が持てると思っていたわけです。実際、名作として有名なようですしね。



恐怖の四季シリーズは傑作ぞろいでして、『刑務所のリタ・ヘイワース』(『ショーシャンクの空に』)、『ゴールデンボーイ』、言わずとしれた『スタンド・バイ・ミー』などがそれらに当たります。どれも映画化されていますね。キングを知らない方でも、映画のタイトルは耳にしたことがあるのでは。

特に『スタンド・バイ・ミー』は有名です。キアヌ・リーヴスの親友で、今は亡きリバー・フェニックスの演技が絶賛されました。キングの作品ではおなじみの枠から外れた子どもーー、親が問題を抱えていて、その親から肉体的あるいは精神的な暴力を受けていて、ある部分で純粋さを失ってしまった子どもーー。を見事に演じ切っていました。

彼自身、複雑な家庭環境で育った子どもです。過去の経験が、クリスになりきるのに役に立ったのかもしれません。

youtu.be
(映画がヒットしたことで、こちらの曲も再び脚光を浴びました)

とまあ、ここまで熱っぽく語ってきましたが、私が初めて知ったキングの作品は四季シリーズではないんですよね。それどころか、『キャリー』でも『ミスト』でも『シャイニング』でもなく、『グリーンマイル』や『IT』ですらない。当時はこれらの有名な作品が、一人の作家さんによって書かれていることすら知りませんでした。

では一体、どの作品なのかというと……。『ダーク・タワー』シリーズです。



渋い。渋すぎる。

ファンタジーの体をとっているとはいえ、主人公は中年のガンマンです。それがひたすら砂漠を歩いたり、海辺でロブスターの化け物と戦ったり、色仕掛けで襲ってくる妖魔と対決したりするって。申し訳ないけど、感情移入できませんわ。

キングの作品全体(最近の作品は違うのかもしれません)に言えることですが、時代背景が1960年代~1980年代後半と古い上に、舞台はアメリカです。正直、中学生になりたてのガキんちょ日本人には理解できない表現が多かった。にも関わらず、彼の作品に惹かれたのはなぜか。

単純に、文章が上手だったんですよね。

誤解しないで頂きたいのが、それまでに読んだ本たちもすばらしかったんですよ。ただ、作風が違っていたの。今までの本はお上品だった。人間の醜さや低俗さを、極めて丁寧な言葉で表現したものが多かった。

しかし、『ダーク・タワー』は違います。くそったれをくそったれとそのままに書く。場合によっては、それ以上に不快な言葉で罵ったりします。その乱暴に見えて緻密、したたかな文に、私は夢中になりました。大人向けの内容だったので、雰囲気だけを楽しんでいましたが。

箸休めクマさん。

そんな『ダーク・タワー』シリーズですが、当時は廃刊になっていたため、続きの本を取り寄せることができませんでした。そのまま放っておくこと、10年。『ショーシャンクの空に』を見逃したと愚図る私のそばには、『ダーク・タワーⅢ 荒地 上』の本が。

これがね、本当に面白いの……!

ぼけっとしている私ですが、ただただ歳を喰ってきたわけではなかったようです。ローランドの気持ちが少しだけ分かる。それでも、やっぱり遠すぎるんですけどね。年齢を重ねる度に、距離が近づいていくのかもしれません。

しかし、時を超えて現れたところからすると、私も〈カ・テット〉の一員だったのかもしれない。この記事を読んで、『ダーク・タワー』が気になったあなたも、きっと〈カ・テット〉の傘下にあるのだと思います。

ファンタジーには飽きたなと思っているそこのあなた、スティーヴン・キングの世界に浸ってみるのはいかがでしょうか。



〈カ〉ってなんやねんとお思いの方も多いでしょうが、〈カ〉は〈カ〉です。詳しくは『ダーク・タワー』本編を読んでみてください。ちなみに力(ちから)ではなくて、カタカナの〈カ〉です。

その際には、四季シリーズもご一緒にどうぞ。私が好きなのは『マンハッタンの奇譚クラブ』です。一番目立ってないやつ……。